GOKIGEN Life

2021/01/15 00:00

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【ごきげん暮らし便り】とは
毎月1日にGOKIGEN Nipponの代表 北原太志郎が日々の暮らしの中で感じたことを投稿します。
そこで浮かんでくる問いかけのようなものを受けて、さらにゲストの方が発信をします。
ちょっとした文通のような、ご縁がつなぐ企画です。(毎月1日、15日に更新)
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「あなたが大切にしている風習は何ですか?」
との問いに、う~ん…と考え込んだ。

私が故郷である岡山にUターンしたのは9年前。
東京で3.11を経験し、人生何が起こるかわからないなら、家族の近くでやりたいことの真ん中を歩もうと決断した。
GOKIGEN Nipponの前身である「もざいくプロジェクト」で長野県の村や秘境と呼ばれる地域を訪れ、
地域に根を張り、文化や風習など受け継がれるものがある暮らしにも魅力を感じていた。

それから9年、私の今の生活はその時憧れていたものに近づいているだろうか。

私の今の拠点は、岡山県玉野市にある宇野港、瀬戸内海に面した港町だ。
かつては宇高連絡船が宇野港と高松を結び、四国から本州への唯一の玄関口だった。
現在は瀬戸大橋など四国との通路が増え、昔の賑わいはなくなったが、
近年はアートの島として有名な直島や豊島への拠点として、観光業の灯は絶えてはいない。



3.11以降、穏やかで災害が少なく、適度に生活も便利な瀬戸内海沿いを求めて、移住者が多い地域でもある。
地理的にも開かれた港町、「来るもの拒まず去るもの追わず」な自由な風潮がこの街にはある。
伝統的なお祭りも簡略化され形式的なものしかなく、風習めいたものはこの地域には少ない。

私個人に目を向けても、家業を継いだ4代目の私だけど、自分の先代や会社について実はよく知らない。
時代に合わせて商売を変化させてきたことは知っているけれど、
代々受け継がれてきた一品だったり、年間行事なんかも、特にない。
このことを、かねてから私はちょっと残念だなと思っていたから、だいしろーの問いに考え込んだのだった。

何もないのか…?
いや、私がこの地域や先代から引き継いでいるものは、確かにある。

それは「風習」と呼ぶには似つかわしくないかもしれないが、生き方や思いだ。
この港町で培われてきた空気感から、「自分の信じた道を好きに進みなさい」と日々背中を押される。
思えば親にも、そうやって育ててもらったなと思う。
家業では、お客さまの役に立ちたいという思いを脈々と引き継いでいる。
そのおかげで今ここで生きていることに、感謝の気持ちを忘れてはいけないなと思う。

お正月には、私が世界一美しい場所だと思っている「王子が岳」に登り、瀬戸内海に注ぐ光を拝む。
これが私の初詣だ。

私は、自分が心地よいと思う風習を大切に遂行しよう。
感謝の気持ちを携えながら。




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名前:近藤(福原)奈々(なな)
所縁のある地域:岡山県玉野市/倉敷市・京都府京都市・東京都・長野県阿智村・広島県安芸郡坂町

有限会社クォリファイ もめん畑 店長
1983年 岡山県玉野市生まれ
京都大学卒業後、株式会社スマイルズで飲食店店長に就き、「手間隙かけた価値あるものを売る」マネジメントを学ぶ。2012年に帰岡。岡山県倉敷市にある本染手織研究所にて染め織りを学ぶ。
卒業後家業の手芸店「もめん畑」を継ぎ、「手仕事の豊かさを伝える」ため奮闘中。二児の母。

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