2020/11/20 12:00
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信州最南部の秘境と呼ばれる天龍村で暮らして、早くも2年半以上が経過しました。東日本大震災のあとに東京を離れ、日本各地を放浪し模索すること数年間の後、地域おこし協力隊としてこの村にやって来ました。
ここ天龍村は、今まで巡った田舎の中でもかなりの山奥だと思います。この村が秘境と呼ばれる理由は、一部に落人伝説が残っていることと、アクセスの悪さという面以上に、閉ざされているが故に外部からの影響が少なかったという部分もあるのではないでしょうか。そのため、日本各地で失われつつある「古き良き田舎の風景」が色濃く残っているように感じます。
宮本常一さんの言葉だったと記憶していますが、「人間が「美しい」と感じる風景には、必ず人の手が入っている」という旨の一節があります。これを私はとある講義の中で知ったのですが、その話し手の方は、この言葉を受けて「風景を読み解くこと」と、「昨日と今日の違いに気付くことができる感性」の大切さを教えてくださいました。
あなたはどんな風景にとけこみたいですか?と問われて思い描くのは、一面の田んぼの緑や、お茶や野菜の小さな自給畑、移りかわる空の色や、冬祭りで煌々と燃える赤い火……どれも田舎では珍しくない光景ですが、その裏側にいる見知った人々の姿を描くとき、自分は「ここだけにしかない風景」の中にいることに気が付くのです。
とけこみたい風景というのは、生まれ育った場所には関係なく、それぞれの中にある「ふるさと像」なのだと思います。そんな風景を一つでも持っていることは、幸せなことなのではないでしょうか。
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プロフィール
名前:本多紗智
縁のある地域:東京都豊島区・埼玉県所沢市・岡山県真庭市・長野県天龍村・大分県由布市
東京生まれ、埼玉育ち。東日本大震災で人生の価値観が変わり、都市を出て日本各地の田舎を渡り歩いています。現在は南信州の天龍村で地域おこし協力隊をしています。ふるさとは自分で見つけていく場所だと思うようになりました。
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