GOKIGEN Life

2020/11/10 12:00

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【ごきげん暮らし便り】とは
毎月1日にGOKIGEN Nipponの代表 北原太志郎がジャーナルを投稿します。そこで浮かんでくる問いのようなものを受けて、さらに他の寄稿者が発信をします。ちょっとした文通のような、ご縁がつなぐ企画です。(毎月1日、10日、20日に更新)

▼今月の北原太志郎のジャーナルはこちら

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昨年の夏から冬にかけて、GOKIGENのたびに3回参加した。書き切れないほどのことを感じ、考え、経験したが、印象的だったことをかいつまんでみる。

8月の中旬、私が最初に訪れたのは宇和海にある漁村、蔣淵で、「とんとこ踊り」に参加した。
初日に海辺でお茶を飲んでいると目の前に停まっている漁船から子供たちが洋服のまま海に飛び込んでいった。お祭りの準備中、おじさんたちは鯛の養殖の網にかかった鯵を捌いてつまむ。1日がかりで飾った船で7つの集落を練り渡る。人々は船上で踊り、宴会をし、お盆の迎えと送りをする。どこまでも海と強く結びつき、海の変化に合わせた生活が営まれていた。


夏の終わりに訪れたのは佐渡島、安養寺の能楽堂で、市民による伝統芸能披露会の準備と鑑賞をさせてもらった。
私が佐渡の旅で一番気に入った景色は、一面に広がる実り始めた田んぼだった。田んぼは、川と山と海とに囲まれ、あらゆる自然を感じた。安養寺の伝統芸能鑑賞では、能、人形劇で日本の歴史を思い出し、大黒さんと恵比寿さんに扮した踊りで盛り上がった。豊かな自然に恵まれて、貿易拠点として文化も多様に取り入れつつ、島にあわせたコンパクトな生活を営んでいた。


冬の初めには、日本のチロルともいわれる長野の下栗の里で、夜通しの「霜月祭り」に参加した。
夜の山は真っ暗、山肌にへばりつくようにつくられた集落は車で入るのも神社まで歩くのも一苦労で、いきなり南アルプスの洗礼を浴びた。霜月祭りは、寒い夜の中、狭い社で、煮えたぎる湯立神楽に密集して歌い踊る。毎日体感している川や太陽のエネルギーを表現しているのかなと思い、人が集まる力強さも伝わってきた。


海、島、山、景色や文化は大きく違う中、私がなんとなく共通して体感したことは、自然に根差した昔からの文化と生活、そして人々の結びつきの濃さだった。

東京の郊外で生まれ育った私は、住宅街の児童公園で遊び、スーパーで買い物をする。週末はちょっと遠出して、河原や広い公園で遊ぶ。そういう生活、風景しか知らなかった。昨年の春、静岡の東部(富士山の麓)で一人暮らしを始め、少し違う場所を知った。夜の暗さや朝露に敏感になり、季節による山の色の変化を感じ、産直市の品物が旬に合わせて変わることに気づくようになった。そのタイミングで参加したGOKIGENの旅だったこともあり、自分の知らない景色、生活、文化に感じるものが多かった。そして、自分の当然だと思っていた風景を振り返るとても貴重な機会だった。
どんどん便利になり、進化していく技術の中で、仕事も日常生活も効率化を追求しながらも、自然に目を向けるとほっとする。無意識に、変わらない風景に支えられ、求めているのかもしれないと気づかされた。

わたしには知らない風景がまだまだたくさんある。とけこみたい風景はどこだろう。

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名前:中島美涼
所縁のある地域:東京都調布市
1994年生まれ
薬学系研究科で修士号を取得(有機化学専攻)し、製薬会社の研究員として働いています。
趣味は音楽(オーケストラ)、旅行、散歩、ランニングなど
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