GOKIGEN Life

2020/08/20 12:00



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【ごきげん暮らし便り】とは
毎月1日にGOKIGEN Nipponの代表 北原太志郎がジャーナルを投稿します。そこで浮かんでくる問いのようなものを受けて、さらに他の寄稿者が発信をします。ちょっとした文通のような、ご縁がつなぐ企画です。(毎月1日、10日、20日に更新)

▼今月の北原太志郎のジャーナル
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「あずかりもの」。

その言葉から感じる、大きな責任を伴うような感覚に、しばらく筆が進まずにいました。

今、私は何をあずかって、何を育んでいるのだろう、と。

生まれ育ったのは、富山県射水市でした。高校卒業を機に京都に進学し、出版社に就職するためにその後東京に移り、36歳になる年に富山にUターンしました。

田舎に戻りたいというより、日本の伝統を大切にしたいとか、いずれ自然とともに暮らしたいという思いは、かなり前から既に心の内にありました。それでもずっと、まだ東京にいる意味がある気がして、仕事後や休日は常に様々な人と出会ったり、あちこちに出かけたりしていました。

そんななか、いつも共通して私の心に深いインパクトを与えるのは、自らの手でものづくりをする人々の在り様でした。

「私は蕎麦が美味しくなるのを手伝っているだけ」という、蕎麦職人の方。「私は野菜が育つのを手伝っているだけ」という、農家の方。火と水に感謝と祈りを捧げながら和紙を漉く和紙職人の友人。

その姿、その言葉に触れるたびに浮かび上がる問いは、「人が人としてこの地球に生き、何かを創るその意味はなんだろう」ということでした。

それを何年も問い続けているうちに、少しずつ学びを深めていた「パーマカルチャー」(※)の考え方にその答えの一端を見つけたのです。

人はその行い次第で、すべての生命を豊かにできる存在であること。そのためには、ただ既存の仕組みに乗っかって「消費」するのではなく、自ら生み出す、創り出すという視点をもつこと。そしてそういった行為の積み重ねによって、持続可能な文化の担い手になること。具体的に何をなすべきかは、各地で自然とともに生きてきた先人の生き方や智恵にヒントがあること。

それが腑に落ちた時、私にとっての東京に住み続けるという選択肢はなくなり、その後色んなご縁が重なって、2年前から富山県氷見市の山あいの集落に住んでいます。

そんな自分のこれまでと「あずかりもの」という言葉を重ねると、私は「あずかりもの」を引き受ける暮らしをしたかったのだな、と気づきました。

地域の大工さんが建て、以前の持ち主によって丁寧に暮らしが育まれてきた今の住居。ご近所や親戚から昨年いただいた苗や種によって彩られる、家の前の小さな菜園。ご厚意でお借りしている農地。

大人になって再び距離が近くなった親戚との会話で、自分のDNAの由来や自分の愛着を形成してきたものの正体に新たに気づかされることも、たくさんあります。

自分をとりまく全てが「あずかりもの」と気づくことで、「今自分が何をすべきか」ということが自然と見えてくるのだと思います。


新たな地での暮らしづくりは何事も軌道に乗せるのに時間がかかっていますが、より多くの人に幸せを配れたり、ゆくゆくは次世代に手渡したりできる場所を創っていけたら。

焦る日も、何もできない日も多々あるけれど、そんな思いで今日も、今ここを生きてます。

Yuko

(※)パーマカルチャー
パーマネント(永続性)と農業(アグリカルチャー)、そして文化(カルチャー)を組み合わせた言葉。
永続可能な農業をもとに永続可能な文化、即ち、人と自然が共に豊かになるような関係を築いていくためのデザイン手法です。私たちの命を支えている自然の恵みである食べ物やエネルギー、水などがどこからきてどこへ行くのか、そして自分の毎日の生活がそれらにどのように関わっているのかを知り、汚染や破壊を引き起こすのではなく、より豊かな生命を育むことが出来るようにそれらと関わっていくこと。そして争うのではなく喜びを分かち合うことを前提とした人間社会を築いていくこと。これらを実現していくために自らの生活や地域、社会そして地球を具体的にデザインしていきます。




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お名前:Yuko
所縁のある地域:富山県、京都府、東京都

1980年 富山県生まれ。
京都大学文学部卒業。
出版社、PR会社で国内外の各地の情報発信に関する業務に関わった後、復興支援・地域活性のコーディネート団体に参画し、広報・コーディネートなどを行う。
その後富山県にUターン。編集・執筆・広報・コーディネート等に関する業務を請け負う傍ら、地域の食材を生かした保存食や発酵食、ローフード、自然食などを探究し、起業準備中。
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